読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

劇団ティルナノーグblog

劇団ティルナノーグのブログです。公演情報やドラマ・演劇情報など書いています。

劇団ティルナノーグの演劇は、家族、再生、絆、をテーマに、誰が観ても伝わりやすい物語を志しております。

山崎亨太

Manannan Mac Lir-山崎と病院.jpg
8年ぐらい前、役者の先輩繋がりでの仕事をオファーされました。


それは病院での防災訓練。


当時はテロ事件が危惧されていたせいか、その病院では大掛かりな防災訓練をするとの事。


ボランティアの人も沢山参加する訓練…綿密な打ち合わせをし、僕は暴れ回る患者役になりました。


院長さんや看護婦さん達とも挨拶を済ませ、先ずは舞台となる病院を見て回る。


先生方の気合いと真剣さが伝わってきます。


先輩の顔を潰す訳にはいかないですし…やるからには全力で演じなければなりません。


緊張が高まってくる。


舞台とは違う緊張感。


更にアメリカのテロ対策班みたいな人達もやってきまして…手と足が震え、心臓の音が大きくなってくる。


でもワクワクしている自分が奥底にはいたり(笑)


とまあ…なんやかんやしてる間に訓練が始まりました。


ボランティアの方達が苦しみながら入ってくる。


とんでもない人数が参加されてたので…まあ凄い光景ですよ。


でも看護婦さん達も真剣な訳ですから…僕も見とれている訳にはいきません。


僕に与えられた演出…先ず列に並び、その看護婦さんが誘導した場所で暴れる…菌を浴びまくった重病人みたいな感じですね。


先ずは集中…テンションを上げて列に並びました。


一人…また一人と順番が近付いてくる。


ドキドキ


ドキドキ


『おらおらぁ〜!』


とでも言う予定だったんですが…とんでもないトラブルが発生。


看護婦さんが集中し過ぎているせいか…僕は普通に院内へ誘導されてしまいます。


(あれ…?段取り変わったのかな…?)


あ〜院内で暴れるのか…うんうん、それはそれで怖い演出だ。


僕は意気揚々と院内へ。



ん?あれはボランティアの人達?


『いや〜緊張したね〜』


『でも実際はさ〜きっとこんなもんじゃないんだろうね〜』


お茶を飲みながら談笑してらっしゃる。


え?ここ?ここで暴れるのか?


いや違う…絶対に違う気がする。


あ〜きっとトラブルがあったんだ…うんうん、きっとそうだ。


ゆっくりとベンチの端に座りました。


ボランティアの人達は優しく、一人寂しく座る僕に水をくれました。


『有り難う御座います』


『お疲れ様』


『あ〜水が美味い』


若干の不安はあったが…まあ普通に休んでいた訳です。


30分ぐらい経ったろうか…先輩が院内に入って来ました。


『お疲れ様です!』


『おつか…え?何してんの?』


『え?誘導されたから休んでます!』


『は?』


『なんすか?』


『それはトラブルだろ!君はトラブルに対処出来ない役者なのか!?』


『…え?…え?』


『君はプロとして来てるんだ!ギャラも払うんだぞ!』


『あ…すいません…自分が馬鹿でした』


『ん〜…どうしよう』


先輩ごめんなさい。


先輩ごめんなさい。


『そうだ!今かテントに突っ込め!』


『え!?』


『あのテントに突っ込むんだ!』


こっそり覗いてみる。


それはテロ対策の方達が座っているテント前のテント。


『あそこにですか!?』


『そうだ!気合い入れて突っ込むんだ!』


『でも…でも…段取りが…』


『これは訓練!実際には突発的事ばかりだ!病院側にも良い訓練となる!』


『でも…でも…』


『役者だろ!』


役者…一気に気合いマックス。


大きく息を吸い込み…僕は全速力でテントへ突っ込みました。


『うわぁ〜!うわぁ〜!』


全力でテントを揺らしまくる。


『息が出来ねえんだよ!息が出来ねえんだよ!熱い…熱いんだよぉ!』


『落ち着いて!』


看護婦さん達が三人で押さえ込んできます。

『離せ!俺が一番酷いんだよ!差別しやがって…俺を診ろ…俺を先に診ろ〜!』


もうテントはメチャクチャです。


更に男性看護師も登場。


『さあ早くストレッチャーに!』


『はい!』


暫く暴れたら段々気持ち良くなってきた。


先ず押さえ込まれ…迅速にシャツを脱がされます。


そしてシャワーの様なモノで水をかけられる…恐らく消毒であろう。


『うぅぅ…うぅぅ』


入り込み過ぎて意識が飛びそうになる。


『大丈夫ですか!?直ぐに治しますから!』


あれよあれよあれよと言う間に運ばれました。


シャワーが寒かったせいで震えが止まりません。


どこまでが本番か解らず…目をギュッと閉じて震えまくっていました。



『うぅぅ…助けてくれよぉ…寒い…寒いよ…うぅぅ…』


『大丈夫!?』


ん?そう言えば静かになっているぞ?


『…え!?もう終わりですか?』


『はい!お疲れ様でした!!』


『あ…お疲れ様でした…何かごめんなさい』


『いえ!もうビックリしましたよ…でも本当のテロでは沢山ありそうですから!有り難う御座います!』


『なら良かった…』



肩を撫で下ろし…着替えた僕は閉会式へ。


院長が感謝の気持ちを述べ…テロでの医療体制についても語り続ける。


するとアメリカのテロ対策班みたいな方にマイクが渡りました。


英語で語って通訳が訳す…まあ素敵な事を話しています。


感動して聞き入っていたら…急に指をさされました。


『ユー!』


『え!?』


『ユーアーグッドアクター!グッジョブ!グッジョブ!』


『ささ…サンキューベリーマッチ!』


いや〜これは嬉しかったなぁ…凹んだ時に思い出すワンシーンの一つです。



先輩有り難う御座います。

ボランティアの人達も有り難う御座います。

病院の人達も有り難う御座います。


そしてアメリカ人さん…貴方の言葉は一生の宝物です。


全てに本当に有り難う御座いました。



さて…そろそろ役者道に入ります。


世界が平和になります様に。

広告を非表示にする